記事の内容
- 卒業論文の書き方について具体的、かつ詳細に解説
- 卒業論文のテーマ設定の方法
- 卒業論文のテーマ設定を終わらせておきたい時期について
卒論においてはテーマ設定が一番大事
卒業論文において、大事なことの一つにテーマ(題材)設定があります。
というのも、このテーマ設定を間違えてしまうと、すべてが台無しになってしまうからです。
テーマ設定は卒業論文に取り掛かる第一歩目にあたります。
しかし、この卒業論文の一歩目が卒業論文全体の「方向性」を決定するのです。
もし設定したテーマが自分のやりたかったテーマと違っていたり、新たな論点を提出することが難しかったりした場合、卒業論文の執筆が非常に困難になってしまうのです。
だからこそ、自分が書く卒業論文の命運を左右するテーマ設定は慎重を期すべきなのです。
卒業論文のテーマ設定で大事なこと
では卒業論文のテーマはどのように設定すべきなのでしょうか。
いちばん大事なことは「自分が一番関心を持っている分野・領域を選ぶこと」です。
卒業論文は一年にわたって付き合い続けなければならないものです。
全く関心がなかったり、あまり得意でない分野を選んでしまっては、卒業論文の執筆が非常に苦しいものになってしまうことでしょう。
逆に関心のあるテーマを見つけることができれば、関心がある分だけ研究書を扱うことが苦ではなくなり、卒業論文の執筆は非常に楽になります。
要するに卒業論文の難易度は、ある意味で選んだテーマに対する自分の関心次第で上下するのです。
テーマ設定の仕方
大きいテーマから小さいテーマへ
まず大前提として、テーマは「大きいテーマ」から「小さいテーマ」へと絞っていきましょう。
最初の段階ではとても大雑把なテーマでよいのです。
どんな分野に興味があり、どんな内容を卒業論文で扱いたいかを考えてみましょう。
その次に、考えついた分野・領域をどんどんと限定していくのです。
例えば言語についてやりたいと考えたとしても、それはまだテーマとは言えません。
「言語」を「言語の中でも敬語について」、さらには「敬語の中でも江戸時代に実際使われていた敬語について」などのように、内容をどんどんと限定していく必要があるのです。
したがって、最初は大雑把にやりたいテーマを決め、その後、自分の関心からテーマをどんどんと狭く限定していくようにしましょう。
POINT
最初は大雑把に「大きなテーマ」を考えよう。その後、「大きなテーマ」を限定していって卒業論文で扱うことができる「小さなテーマ」にしていこう。
関心のある分野・領域の決め方
では大雑把でよいので「大きなテーマ」を決めましょう。
その際、手がかりとなるのが先にお話した「自分の関心のある分野・領域」です。
もうすでに「この分野がやりたい」と決まっている人であれば、この作業はすぐに終わります。
ですが、自分のやりたいことがわからない人は、大きいテーマを選ぶことから始めなくてはいけません。
そんな方におすすめの方法は、自分が興味・関心のある分野・領域を複数挙げてみることです。
紙に書き出してみるといいでしょう。
その際、思いついたものをその場で却下することは禁止です。
思いついたことは否定することなく、どんどん紙に書き出していきましょう。
そしてその分野についてネットなどで検索してみるのがオススメです。
検索してみて、自分が興味をもった分野・領域に順位をつけてみてください。
ここではやりたい領域=テーマ(一位)が決まらなくても大丈夫です。
ここで重要なことは、次にご紹介する作業に移った時に決定できるように2から3個程度にテーマを絞っておくことになります。
POINT
「大きなテーマ」は自分の興味・関心から決めよう。この段階で「大きなテーマ」を2〜3個程度に絞っておこう。
テーマをどんどん限定していこう
「大きなテーマ」が複数見つかったなら、それをどんどんと限定していき、最終的に卒業論文で扱えるようなテーマにしていきましょう。
大きなテーマを限定していく方法でおすすめなのは、概説書や入門書を実際に手にとってみることです。
概説書とはある分野・領域における様々なテーマを項目ごとにまとめ、そのテーマの一般的な学説を簡単に紹介してくれる本です。
また入門書も概説書より内容は簡単になってしまう場合が多いですが、その領域・分野の主なテーマをわかりやすく解説してくれる本になります。
この概説書や入門書を駆使して、絞り込んだテーマの中で自分が扱えそうなテーマ、興味があるテーマを絞り込んでいきます。
概説書は前から順番に読み勧めてもいいですが、目次を見て興味をもった箇所から読み始めてもいいでしょう。
複数個挙げたテーマの概説書や入門書に目を通し、自分がやってみたいと思えるテーマに出会えたなら、後はそのテーマのどんなところに興味があるかを考えて絞っていくだけです。
絞るときのコツは、興味関心以外に「自分ならどう考えるか」また「新たな切り口はないか」という視点を常に持っておくことです。
このように考えることで、自分にしか考えることができないテーマへと限定していくことができます。
なお、ネットで検索すれば、その分野・領域の概説書や入門書を簡単に見つけ出すことができます。
お目当ての概説書や入門書が見つかったら、大学や街の図書館で借りてみたり、本屋さんで入手してみたりしてください。
POINT
概説書や入門書を読んでみて、その中で自分に扱えそうなテーマ、より興味のあるテーマに限定していこう。
研究書や論文を実際読んでみよう
ここまで領域や分野を決定し、大きなテーマから小さいテーマへと限定して、卒論のテーマを絞ってきました。
しかしながら、概説書や入門書で扱えそうなテーマは見つけられたけど、より小さなテーマに絞ることができないという人もいるでしょう。
小さなテーマに絞ることができない場合は、実際に研究書や論文を読んでみるといいでしょう。
研究書とは概説書のように様々なテーマについて論述しているのではなく、ある特定のテーマについて書かれた本になります。
したがって、論文も同様ですが、「大きなテーマ」ではなく、実際に「小さなテーマ」を扱っている本と言うことができるのです。
概説書や入門書を駆使して選んだテーマの中には、必ずたくさんの論点が存在します。
テーマの論点ごとにたくさんの議論がありますので、そこに自分が参入して議論することができるかを考えてみるといいでしょう。
また論点でなくとも、研究書や論文を読んでいると、そのテーマに潜在する問題点が見つかることがあります。
その問題点を自分なりに考察できるのであれば、それが自分の卒業論文のテーマとなります。
論文は cinii(サイニー) というサイトからキーワードを入力することで検索することができます。
専門書はアマゾンなどのネット検索の他に、概説書の参考文献一覧から調べることができ、また論文の引用から調べることが可能です。
POINT
研究書や論文を実際に読んでみることもおすすめ。個別的な論点が展開されていたり、そのテーマに潜在する問題点を知ることができる。
決めたテーマにおいて新しいテーゼを考えることができるか
卒業論文で扱う、より限定されたテーマが見えてきたところで、自分が決めたテーマに関して新しいテーゼ(=主張)を与えることができるかを検討しましょう。
新しいテーゼとは、これまで誰も言及したことがない主張のことです。
この新しいテーゼを提出することが卒業論文の主目的となります。
さて、この新しいテーゼは、論文や研究書で展開されているテーゼに対して反論したり、論文では展開しきれていない論点を見つけ出して、その論点をさらに展開するといった作業から作り出すことができます。
しかし、研究書を書いたり、論文を書いたりしている人は、長年研究をしているその道のプロです。
すぐに見つけ出すことができたら最高なのですが、まだ研究のスタートラインに立ったばかりの学部生に反論や論点を作り出すことはなかなかに難しい作業になります。
そこで一つコツを伝えるならば、「別の観点から議論することができないか」を考えることです。
というのも、議論というものは何かしらの前提をたてて行います。
例えば、「人を殺してはいけない」というテーゼがあり、そのテーゼを「道徳的な理由」という前提から主張しているとしましょう。
ところで、「人を殺してはいけない」というテーゼは、「法律で罰せられるから」という別の前提=観点から主張することもできます。
このように、ある観点で主張されているテーゼを、別の観点から主張してみることで新しい切り口を作り出すことができます。
もちろん、論文や研究書で議論されていることとは別に、自分の独自の切り口が見つかったのであれば、それも十分に新しいテーゼになります。
あとは新しいテーゼをうまく論証することができれば、卒業論文の大半はクリアしたも同然です。
POINT
新しいテーゼ(主張)を考えよう。新しいテーゼが思いつかない場合は「別の観点から議論できないか」を考えてみよう。
先行研究をあたろう
新しいテーゼを考え出すことができたら、次はそれを論証することができるかを検討しましょう。
なんの論拠もないテーゼをテーゼということはできません。
必ず根拠を持ってテーゼは示されなければならないのです。
したがって、そのテーゼがしっかりと根拠に基づいているかを吟味する必要があります。
そしてこの吟味において重要になるのが「先行研究」になります。
もちろん、まだテーマ設定の段階ですから、本腰を入れて先行研究にあたる必要はありません。
ですが、パラパラと研究書をめくってみることは非常に重要な作業と言えます。
自論を補強してくれる論文だったり、研究書がないかを探してみることも大事ですし、逆に新しいテーゼだと思っていたら誰か別の人が同じような主張をしている可能性もあります。
したがって、必ずどのような先行文献があるのかをリストアップするようにしましょう。
リストアップすることで、自分が扱おうとしている卒論のテーマにおいて、どれだけの研究書があるのかを把握することができます。
多ければそれだけ読む量は多くなるかもしれませんが、自論の根拠を補強しやすくなります。
しかし、あまりにも少なかった場合、自論を補強するのが難しくなり、様々な工夫が必要となることもあります。
ですから、テーマ設定の段階ではどれくらい研究書があるかは把握しておくと後々研究が楽になるのです。
POINT
新しいテーゼに根拠を与えることができるか先行研究をあたってみよう。先行研究の量がどれくらいあるかも把握しよう。
統計は取りやすいか
設定したテーマが研究書を読むだけでなく、統計を取る必要がある場合も注意が必要です。
というのも、統計が取りにくいケースが考えられるからです。
例えば、「東南アジアにおける女性のファッション」について研究をしたいと考え、その統計を取りたいと考えたとしましょう。
この場合、いずれかの方法で「東南アジアの女性」にアンケートを実施する必要がでてきますが、そのアンケートを実施する手段がなければ統計の取りようがありません。
アンケートを実際に行うことができるかどうかをしっかりと調べていないと、いざ卒論に取り組んだ段階で頓挫してしまう可能性が出てきてしまいます。
したがって、卒論で統計を取りたいと考えているのであれば、実際にアンケートを取ることが可能かどうかを事前に把握しておくようにしましょう。
POINT
卒論で統計を取る場合は、アンケートを実際にとることができるか事前に把握しておこう。
その分野は本当に研究できる?
ここまでテーマ設定の仕方を解説してきましたが、一点注意しなければならないことがあります。
それは「自分の関心があるテーマを自分の所属する学部、学科、ゼミで卒論にすることができるかどうか」です。
例えば、経済学部のゼミで、映画論をテーマにして卒業論文を書くのは難しいです。
映画と経済学をどうにかして接合したテーマにしないと卒業論文として認めてもらうことは厳しいでしょう。
多くの人は、卒論で自分のテーマを扱えるかどうかをしっかりと確認していると思います.
しかし、ごくたまにですが卒論のテーマを勝手に設定して卒論を書き進めてしまい、途中で変更を余儀なくされる学生がいます。
たとえ自分が選んだテーマで書いた卒論がものすごくいい出来だとしても、大学に承認してもらえなければ卒業すること自体ができなくなります。
ですから、必ず大学や先生に自分が設定したテーマで大丈夫かどうかを確認するようにしましょう。
卒論は単位取得にとても時間がかかる作業です。
途中でのテーマ変更は想像以上に労力がかかるので、テーマ設定は細心の注意を払って行うようにしましょう。
POINT
自分が設定したテーマは、本当にその学部・学科・ゼミに卒業論文として提出することができるか確認しよう。
指導教員と相談しよう
最後に卒論のテーマで困ったことがあるなら、指導教員と相談するようにしましょう。
指導教員はその領域・分野のプロであり、論文を書くプロです。
どのようなテーマが卒論になり、どのようなテーマでは卒論を書くことが難しいかを熟知しています。
したがって、卒論のテーマ設定が一人ではうまくできない場合、指導教員を頼ってみると問題が解決することがしばしばあります。
とはいえ、何もアイデアがないまま指導教員に相談しても、先生が困ってしまうだけです。
必ず自分なりにテーマを考えた上で相談するようにしましょう。
そして先生も自分の研究や大学の雑務などで多忙ですから、相談する際は必ずメールなどでアポイントをとることが重要です。
POINT
卒業論文で悩むことがあれば指導教員に相談しよう。相談する場合、必ず自分なりにテーマを考えたうえで先生とアポイントを取ろう。
テーマ設定はいつまで行えばいいか
この記事の最後に卒論のテーマ設定を終わらせておきたい時期についてお話したいと思います。
それはズバリ「大学4年生の4月まで」です。
遅くとも5月までには終わらせておきたいところです。
しかしながら、理想を言わせてもらうならば、大学3年生の時期には設定し終えてしまうのがおすすめです。
テーマ設定はなるべく早く終わらせるとそれだけ卒論の準備に時間を割くことができます。
また大学4年生の時期は大事な就活が控えています。
卒論準備や就活にしっかりと時間を割くためにも、卒論のテーマ設定を早く終わらせておくようにしましょう。
ここまでお読みくださりありがとうございました。
次は卒論の資料準備の方法について解説したいと思います。