記事の内容
- ニーチェを学ぶ意義
- ニーチェのおすすめ入門書5冊
- 初心者におすすめのにニーチェのおすすめ著作3冊
- レポートでニーチェを引用するメリット
ニーチェを学ぶ意義
哲学や思想を全く学んだことがない人でも、ニーチェの名前を聞いたことがない人はあまりいないでしょう。
ニーチェがこれほどまでに有名になったのは哲学に与えた衝撃の大きさゆえです。
ニーチェの登場は数千年にも及ぶ哲学を根本から揺るがす一大事でした。
従来の哲学に対して徹底的な批判を加え、それまでの哲学を180度変えてしまったのです。
この批判はニーチェが没し、100年以上経った今もなお有効なのです。
だからこそ、大学の授業で頻繁に取り上げられ、ニーチェに関する様々な本が出版されているのです。
ニーチェを学ぶことは、フランス現代思想などニーチェ以後の哲学の理解を深めてくれます。
なぜならニーチェの衝撃は多くの哲学者を魅了し、その哲学者たちはニーチェを糧として自分の哲学を構築していったからです。
もちろん、ニーチェ自身の著作を読むことも重要です。
ニーチェの哲学はしばしば「価値の哲学」と呼ばれ、既存の価値を批判し、新たな価値を創造する哲学です。
この価値の哲学を学ぶことによって、旧来的な常識や道徳を批判して破壊し、新たな未来を紡ぐ方法を教えてくれるのです。
ニーチェ哲学のポイント:価値転換の哲学
ニーチェの哲学は非常に難解であり、すべてを伝えることは困難な作業となります。
しかしながら、私がニーチェ哲学の中でなにが一番重要であるかと問われたならば、真っ先に「価値転換の哲学」であると答えるでしょう。
現代社会は平等というものを称揚して持ち上げますが、実際のところ社会では不平等なことばかりです。
貧乏暇なしとはよくいったもので、貧乏人はいくら稼げど貧乏のままであることが大半です。
また年が上というだけでなぜかヘコヘコしなければならず、人生の大半の時間をやりたくもない仕事に割かれる毎日。
ですが、こうした社会制度や社会通念(≒常識や道徳)は、人間が考えて作り出したものにほかなりません。
したがって、人間が別のシステムや制度を考えたならば、これまで当たり前と思われてきたことは変化するのです。
つまり、人間の思考や思考する方法が変われば、社会制度も社会通念が変わります。
それまで価値をもっていたものは常識や道徳といった社会通念は消え失せ、新たに価値をもった何かが芽生えるのです。
これをニーチェは「価値転換」と呼びました。
この価値転換とは例えば、貧乏人が富豪になることではありません。
ただ単に首が挿げ替わっただけでは、未だ貧乏人も富豪のどちらも存在してしまうのです。
そうではなく、ニーチェがいう「価値転換」とは構造それ自体を変えることにあります。
富豪、貧乏人の入れ替えではなく、この二項の間にある「/」(=構造)をなくすことによって、富豪も貧乏人もいなくなるのです。
このようにニーチェ哲学の核とは、旧来の価値を批判して新しい価値を作り出すことにあります。
これは従来の哲学では到底考えることができない新たな哲学であり、その衝撃は計り知れないものでした。
ニーチェをレポートで使うメリット
ではニーチェをレポートで扱うメリットは何になるのでしょうか。
それはこれまでの哲学に対しての批判が簡単になるという点にあります。
つまり、多くの哲学を批判することができるため、簡単にレポートの論点を作ることができるのです。
また哲学だけでなく、映画論であれ芸術論であれなんでも、ニーチェを引用することができます。
なぜなら、ニーチェは藝術をモデルに価値転換などの概念を語っているからです。
藝術とはこれまでになかったものを生み出し、新しい価値をつくる行為です。
したがって、ニーチェを参考文献にあげ、価値転換の哲学を書くことでレポートの評価をあげることができるのです。
レポートの書き方について
ニーチェのおすすめの入門書
ここからはニーチェのオススメの入門書をご紹介したいと思います。
今回ご紹介する書籍はどれもニーチェについて学ぶのに最適なものとなります。
がしかし、ニーチェの思想は難解であるため入門書を呼んだとしても、解説を必要とする場合が多々あります。
したがって、そのような解説が必要な概念に関しては、 別途わかりやすく解説した note を執筆しています。
入門書と合わせてご利用いただき、ニーチェに関する理解を是非深めていただけたら幸いです。
それではご紹介していきます。
ジル・ドゥルーズ『ニーチェ』
『ニーチェ』はフランスを代表する哲学者であるジル・ドゥルーズによって書かれたニーチェの入門書です。
ドゥルーズはフランスを代表するニーチェ研究者であり、彼の主著にもニーチェの影響が色濃く反映されています。
この本の構成は1/ニーチェの生涯について、2/ニーチェの哲学について、3/ニーチェの著作の登場人物事典、4/抜粋集になります。
とりわけ3/辞典が非常に便利で、ニーチェの著作に登場する人物がどのような役割をもっているかが解説されています。
ニーチェの著作は難解なため、この辞典を横においておくことで理解が進む場合が結構あります。
また4/抜粋集も一流の研究者であるドゥルーズが、ニーチェ作品のエッセンスが詰まった重要な文章を取り出して掲載しています。
ニーチェの著作を読む前に、ニーチェがどういうことを言わんとしているかを掴むことができます。
しかしながら、非常に読み応えのある本のため、じっくりと時間をかけつつ読解することをおすすめします。
こちらの『ニーチェ』について、私がわかりやすく具体例を用いて解説した note がありますので、是非そちらも参照してみてください。
ニーチェ研究でも当然のように引用される文献の一つなので、レポートで引用できたらそれだけで高得点間違いなしです。
【ニーチェ入門】ジル・ドゥルーズ『ニーチェ』をわかりやすく解説【文系レポート対策】|だーし
note.com
村井則夫『ニーチェ ツァラトゥストラの謎』
日本の研究者である村井先生(現・中央大学教授)が書いたニーチェの入門書になります。
とりわけ、ニーチェの主著である『ツァラトゥストラかく語りき』の解説がメインとなります。
なので是非『ツァラトゥストラ』の邦訳を横に置きつつ読んでいただきたい本になっています。
またこの本の構成としては、『ツァラトゥストラ』のそれぞれの部の要約があり、その注釈があります。
もちろん『ツァラトゥストラ』に即してニーチェの主要概念についての解説も充実しております。
非常に解説も丁寧なのでニーチェを学んでみたいと思っている人におすすめの1冊となります。
ただし、ページ数が350頁弱ありため、あまり読書なれしていない人にとっては通読が難しいかもしれません。
ジャン・グラニエ『ニーチェ』
グラニエの『ニーチェ』はフランスのクセジュ文庫から出ているニーチェの入門書です。
ドゥルーズの『ニーチェ』と同様、ニーチェの生涯を解説してからニーチェの哲学の解説があります。
特にニーチェの解説がコンパクトにまとまっているため、非常に学習がしやすい本になっています。
ページ数も130頁ほどなので通読がしやすい入門書といえるでしょう。
内容としてもドゥルーズの本ほど難しくはない印象ですが、それでもニーチェを学ぼうと思っている人には難しく感じてしまうかもしれません。
こちらもいずれ note で具体例を用いながらわかりやすく解説をしてみたいと思います。
永井均『これがニーチェだ』
昔から定番のニーチェの入門書といえば永井先生が著した『これがニーチェだ』になります。
分量も200頁強と初学者にはちょうどよく、ニーチェの人生に即しながらその著作を読み解いていきます。
20年以上前に出版された本ですが、解説もわかりやすくニーチェ哲学のエッセンスを知ることができます。
構成としてはニーチェの思想を大きく三段階に分けて解説しています。
近年、ニーチェを語るおよそニーチェとかけ離れた本がベストセラーになっていますが、タイトル通り、世間一般に受容されているニーチェ像がどれほどニーチェとかけ離れているかをしっかりと伝えてくれる本です。
河出書房新社『ニーチェ入門』
『ニーチェ入門』は日本の研究者のニーチェに関する論文を集めた本です。
論文であるため少し難しい内容となっていますが、様々な視点からニーチェを眺めることができます。
使い方としては頭から読むのもいいですし、目次を見て面白そうなタイトルの論文から読んでみるのもいいでしょう。
ページ数は200頁程度ですが、内容の密度が非常に濃い1冊になっています。
またニーチェの入門書を1冊読み終えた方が2冊目として読むのにも適しているといえるでしょう。
いずれこの論文集の中でもレポートで使いやすいものについては、note でわかりやすく解説してみたいと思います。
ニーチェのおすすめの著作とおすすめの邦訳
ここまでニーチェのおすすめの入門書について解説してきましたが、実際にニーチェの著作を読む場合はどれがいいのでしょうか。
これまでニーチェの著作は多くの人の関心を惹きつけてきたため多くの邦訳が出版されています。
ですが、ニーチェの哲学はアフォリズムや詩的表現がふんだんに使用されているため、翻訳が非常に重要になってくるのです。
また初学者がニーチェの詩的な文章を読んだとしても、ほとんど理解することができない場合が多いです。
したがって、もちろんニーチェの著作はどれも難解なのですが、そのなかでもニーチェの著作の中で読みやすい文献を挙げたいと思います。
おすすめしたい著作はたくさんありますが、たくさん提示したとしても選ぶのが大変になってしまうと思うので、ここではとりあえず3冊挙げておきたいと思います。
『善悪の彼岸 / 道徳の系譜』(ちくま学芸文庫)
ニーチェの著作はアフォリズムとよばれる詩的表現が多いです・
しかし、この『善悪の彼岸』と『道徳の系譜』は論文形式なため、ニーチェの著作の中ではわかりやすい内容となっています。
邦訳としては、翻訳としてもよく、入手のしやすさも簡単なちくま学芸文庫をおすすめします。
割と最近出た光文社文庫も読みやすい訳になってはいるのですが、ニーチェの文体がいまいち伝わってこず、最初からちくまで読むことをおすすめします。
『ツァラトゥストラかく語りき』(河出文庫)
ニーチェの主著である『ツァラトゥストラ』もおすすめの1冊です。
詩的な表現が多いですが、先に紹介した村井先生の『ニーチェ ツァラトゥストラの謎』と一緒に読むとニーチェ哲学が何を言おうとしているのかがわかります。
翻訳としては手塚先生の訳とどちらをおすすめするか悩みましたが、研究で使用されているグロイター版からの翻訳である佐々木先生の翻訳をおすすめにしました。
手塚先生の翻訳も名訳なのでお好きな方をお選びください。
『悲劇の誕生』(中公クラシックス)
ニーチェ初期の作品である『悲劇の誕生』もニーチェの著作の中では読みやすい部類に入ります。
ニーチェ哲学がまさに始動しはじめる1冊であり、ニーチェの哲学観を知ることができる1冊です。
翻訳としては中公クラシックスがおすすめです。
というのも中公クラシックスは『世界の名著』というシリーズの再販であり、この『世界の名著』は高校生が読むことができる翻訳として出版された経緯があります。
したがって、翻訳が非常に読みやすくなっているため、ニーチェを読んでみたいと考えている人には最適の翻訳と言えるでしょう。
ニーチェを味わおう
ニーチェの難解さはもちろん内容の難しさもあるのですが、異様な文体のせいでもあり、詩的な表現を多用することにあります。
ここにニーチェを読もうとする人が出鼻をくじかれてしまう原因があるのです。
したがって、アフォリズムがあまり採用されていないニーチェの著作から入門するべきなのです。
今回ご紹介した本であれば、『善悪の彼岸』と『道徳の系譜』が一番おすすめです。
ニーチェには珍しい論文形式の本だからです。
そしてもっと言えば、『道徳の系譜』から読んでみるといいでしょう。
というのも、『善悪の彼岸』が世間にあまり理解されず、自分で解説するために書いたのが『道徳の系譜』だからです。
もちろん、『道徳の系譜』も難解なので諦めずに腰を据えて読むことが重要になります。
ニーチェの文章は非常に豊かで、一言一言が美しいものですから、是非その美文とともにニーチェ哲学を味わっていただきたいと思います。
もちろん、レポートで単位をとるためにもニーチェは非常に便利です。
ですが、そのレポート執筆の過程でニーチェの魅力に気づいていただけたらこれ以上嬉しいことはありません。
ニーチェの著作を手にとってくださる人が一人でも多くなることを切に願っております。
ここまでお読みくださりありがとうございました。
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