この記事の内容
- 大学院入試の過去問の入手方法
- 過去問の活用方法
過去問は絶対に活用しよう
稀に過去問をいっさい解くことなく院試を受ける人がいます。
それで合格出来る人はいいです。
しかしながら、ほとんどの人は対策なしに合格することはできません。
なぜなら相手が要求していることを知らずに試験を受けるということは、戦において単騎で相手の懐に飛び込むようなものだからです。
試験において出題されないものを一生懸命勉強しても意味がありません。
和文仏訳(日本語をフランス語に翻訳する)問題がでているのに、仏文和訳(フランス語を日本語にする)問題の対策をいくらしても無駄なのです。
和文仏訳には和文仏訳の、仏文和訳には仏文和訳のコツがあり、それぞれで別個の対策が大切になるのです。
したがって、大学院に合格するためには戦うべき相手を知るために、過去問を入手することが必須となります。
相手が求めていることを正確に把握し、その要求に即した対策を立てることが、大学院合格の最初の一歩といえます。
今回は2回に分けてになりますが、大学院試における過去問の入手法と活用法に焦点を当ててお話ししたいと思います。
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過去問を入手する方法
過去問は大学院を受験する上で、絶対に入手すべきものなのですが、大学院によって過去問の入手方法がそれぞれ異なります。
そこで、私が実際に受験した大学院(東大、一橋、早稲田)ごとに、過去問の入手方法を説明していきたいと思います。
東京大学大学院
東大の場合、過去問は購入する形になります。
まず本郷の人文社会系の場合ですが、複写センター(http://www7b.biglobe.ne.jp/~printservice/)から購入することができます。
お値段は5年セットで ¥3,200 と少し値段はしますが、バラ売りで買うよりは安くなっています。
駒場の場合も書籍部(http://www.utcoop.or.jp/cb/news/news_detail_5127.html)で過去問を購入することができます。
基本的には3年分の過去問が置いてあります。
それよりも前の過去問が欲しい場合は店員さんに確認した方が良いでしょう。
お値段は一冊1,400円と高いですが、なくては始まりませんので必ず入手するようにしましょう。
さて、コロナ禍以前は東大のキャンパス内の複写センターで過去問を直接購入できていました。
しかし、現在(2020年12/28)、東大のキャンパス内には関係者しか入ることが出来なくなっております。(https://www.u-tokyo.ac.jp/ja/general/COVID-19-entry-restrictions.html)
したがって、基本的には通信販売を利用して購入することになります。
また東大の大学院に先輩がいる人は、先輩が使っていた過去問を譲り受けるのも手です。
過去問自体は、大学院入試が終わってしまえば必要のないものですからね。
とはいえ、たとえ譲り受けたとしても、必ず最新の入試問題は入手するようにしましょう。
譲り受けた過去問が古かった場合、試験形式が変わってしまっている可能性もあるからです。
一橋大学大学院、早稲田大学大学院
東大の場合は過去問を購入しましたが、ほとんど例外的といえます。
早稲田大学も一橋大学も含めた多くの大学院の場合、過去問は大学側がネット上で公開していることが多いです。
まず早稲田大学ですが、早稲田大学入学センターに全学部の院試問題がまとまって掲載されています(https://www.waseda.jp/inst/admission/graduate/past_test/)。
ここから、自分が受験しようと考えている研究科の問題をダウンロードすることができます。
また一橋大学も早稲田大学同様、ネットからダウンロードすることができます。
ただ、早稲田と異なり、各研究科の院試問題がまとまっているわけではありません。
例えば、社会学研究科であればこちら(https://www.soc.hit-u.ac.jp/admission/gs/exam.html)、言語社会研究科であればこちら(https://gensha.hit-u.ac.jp/admission/past-exam.html)といったように各研究科ごとに過去問が掲載されているのです。
したがって、一橋大学の場合、自分が受験しようと考えている研究科のホームページにアクセスして過去問を入手することになります。
今回紹介した三つ以外の大学院も上記のいずれかのパターンに該当するかと思います。
過去問の入手方法をしっかりと確認し、必ず手元に置いておける状態にしましょう。
過去問の活用法(1)
早速過去問を解いてみよう
過去問を入手したなら、まずは実際に問題を解いてみましょう。
それも時間を測って解いてみることをオススメします。
なぜなら問題を解いてみることによって、あなたが志望している大学院がどのような要求をしているかを知ることができるからです。
冒頭でもお話しした通り、相手の要求を知ることが合格に直結するのです。
もちろん、ここで問題をスラスラ解くことができるなんてことはまずないでしょう。
解けない問題や知らない単語ばかりで自信を失ってしまうかもしれません。
ですが、最初はそれでいいのです。
問題を解くことによってどのくらいのレベルまで自分の実力を高めたら良いのかを知ることができます。
目標がわかれば、あとはその実力をつけるために逆算をしていけばいいだけです。
大学院に合格するための到達点をしっかりとイメージして持っておくことが、院試合格の鍵となるのです。
なお、最初に解くのは最新の入試問題としましょう。
「過去問を入手する方法」でもお伝えしましたが、最新のものでないと出題形式が変わってしまっている可能性があり、せっかく分析しても徒労に終わってしまう可能性があるからです。
最新のものは院試の直前に解いて力試しをしたいと思うかもしれませんが、最初の段階で解くことをお勧めします。
POINT
院試の問題傾向や合格に必要な学力を把握するために、まずは過去問を解いてみよう。最新のものを解くことが重要。
過去問を分析しよう
過去問を解いてそれで終わりでは意味がありません。
目標を見定めたならば、そこに至るための道筋をしっかりとつける必要があります。
そのためには、過去問の分析が肝心になってきます。
では何を分析すればいいのでしょうか。
どのような設問が出ているか?
まずはどのような設問が出題されているかを確認しましょう。
和文英訳ないし英文和訳が出ているのか、選択問題が出ているのか。
語学以外に専攻に関する試験が出ているのであれば、どのような問題が出題されているのかを分析してみましょう。
論述させるものなのか、空欄に当てはまる用語を入れさせる問題なのか。
設問の形式を見るだけで、やらなくても済む勉強が見えてきます。
例えば、英文和訳は出題されているが、和文英訳は出題されていないのであれば、後者に時間を割くのは大学院試においては時間の無駄になってしまいます。
限りある時間を有効活用するために、まずは設問を分析して、対策すべき形式を限定しましょう。
POINT
設問を分析して、対策するべき問題形式を限定しよう
語学の分析
文系の院試において英語や第二外国語の学習はほぼ必須になってくることでしょう。
したがって、まず語学で見極めるポイントとしては、1/文法力 と2/単語力 になります。
1/の文法力に関して、どれくらいの文法知識が要求されているかが鍵になってきます。
例えば、東大本郷と東大駒場におけるそれぞれのフランス語の院試問題を分析してみると以下のことがわかってきます。
つまり、東大駒場では「単純過去」に関する文法知識が問われているのに対して、東大本郷では「単純過去」に関する文法知識は問われていないのです。
したがって、東大駒場と東大本郷の院試においては、要求する文法の学習範囲が異なってくるのです。
2/単語に関しても、語学は単語力ですから(参照:フランス語力向上!初学者におすすめ仏単語帳)、覚えていないよりも、より多く覚えておくに越したことはありません。
しかし、提出する論文などもあるため、語学ばかりやっていられないのも事実です。
したがって、単語に関しては過去問を解いた時点でわからなかったものをピックアップしておくことがオススメです。
私の場合は、わからなかった単語に黄色マーカーでチェックを入れておりました。
多くの人はベーシックな単語を単語帳を用いて勉強することでしょう。
まずはその単語帳をしっかりと習得することを何よりも優先しましょう。
そして単語学習がある程度終わったら、再度過去問でつまずいた単語に戻ってくるのです。
これにより、院試においてどの程度の単語力が求められているかがわかってきます。
もしベーシックな単語帳を一冊やってもわからない単語が多かった場合は、それよりも一つ上のレベルの単語帳に進みましょう。
目安としては9割の単語がわかるようになっていれば単語力は十分と言えるでしょう。
注意点として、院試においては絶対にわからない単語が出題されるということです。
わからない単語を出題する意図としては、文脈から類推させて解答させることが挙げられます。
POINT
・どこまでの文法知識が要求されているかを分析しよう。
・要求されている単語レベルを測るために、過去問を解いてわからなかった単語をピックアップしておこう。のちにベーシックな単語帳を仕上げた段階で再度ピックアップした単語に戻り、さらに上のレベルの単語帳が必要かどうかを判断するための材料にしよう。
専門知識を問う試験について
文系の大学院試では、自分が専攻する学問の知識を問う試験が課される場合が多々あります。
この試験は大学院で研究するに際して、これだけは最低限知ってて欲しいという大学からのメッセージになります。
専門知識を問う試験で大事なことは2つあります。
つまり、問われる知識が、1/どれくらい有名なのか。2/どのような傾向性を持って出題されるかです。
1/に関してはどこまで学習するべきかに関わってきます。
どの学問にも、影響力のある概念や考え方が数多く存在しています。
したがって、有名な知識が多く出題される場合、ベーシックに概説されている本を一冊仕上げることが重要になってきます。
したがって、そこまで労力は必要あらず、より論文の執筆や語学の学習に時間を割くことができると言えるでしょう。
しかしながら、その学問領域で有名な知識が多く出題されるということは、受験者ならば誰でも知っているが故に、ミスが許されないことを意味します。
手堅くしっかりと記憶に定着させ、クリアな説明ができるようにしておく必要があります。
逆にあまり有名でない知識が問われる場合は、ベーシックなものに加えて、さらに厚く学習する必要が出てきます。
概説書だけにとどまらず、各分野のスタンダードとされている本を読んでいくことも視野に入れる必要があるでしょう。
この場合、範囲が広くなってしまい、勉強がとても大変になってしまいますが、学習すればするほど他の受験者と差がつきやすく、何より大学院に入ってから役に立ちます。
ですが、院試は専門知識の試験だけでなく、論文の提出や語学もあります。
またあまりに深掘りしすぎても、際限がなく沼にハマってしまう可能性もあります。
設問の中には、絶対に誰もわからない問題というのもありますので、どこまでやるか制限を設けることも重要な判断となります。
2/は出題傾向の対策に繋がってきます。
概説書で専攻する分野の全体像を掴むのは当たり前のことですが、出題されやすいジャンルや分野というものが存在します。
あくまでも例ですが、史学科の院試の場合、設問が時代ごとに区切られている場合がそれに当たります。
つまり、8つ設問があるうち、奈良時代から一題、鎌倉時代から一題、江戸時代から一題といった感じです。
もう一つ、哲学科の例を挙げるならば、古代哲学から一題、中世哲学から一題、英米哲学から一題といった具合です。
いうまでもないことですが、傾向性を掴むには一年分だけではなかなか見えて来ず、何年か分の過去問を解くことでわかってくるものです。
コツとしては、設問が「何かのグループ」に分けることができないかという視点をもって過去問を分析してみることでしょうか。
これは院試当日、設問を解く際の指針にもなってきますので、ぜひ分析してみてください。
POINT
・専門分野において、有名な知識を問うているかどうか。有名な知識ならば、基本知識をしっかりと身につけてミスのないように。有名でない知識ならより詳細に学習するが、深堀をやめる決断も大事
・問題の傾向を掴み、出題されやすいジャンルや分野を見つけ出そう。「何らかのグループ」に分類できるのではないかと考えながら分析をしてみよう。
今回のまとめ
ここまで大学院入試における過去問の入手方法と、過去問の活用方法について解説してきました。
ですが、活用法に関しては長くなりすぎてしまい、今回一回だけでは解説しきることができませんでした。
したがって、過去問の活用法の続きは2回に分けて書き記したいと思います。
とにかく合格するためには過去問研究は必須になります。
ですから、まずは自分が志望する大学院の過去問はすぐに入手してください。
そして手に入ったのならまずは実際に過去問を解いてみてください。
もちろん、解いたからといってそれで終わりにしてはなりません。
その過去問を分析することが大事になってきます。
分析するときのポイントは上記で解説した通りです。
もちろん、私が書き記したこと以外にも分析してわかることもたくさんあるでしょう。
それが見えてきたならば、大学院合格はグッとあなたに近づいてくることでしょう。
私が経験したことが少しでもお役に立てれば幸いです。
ここまでお読みくださりありがとうございました。
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