記事の内容
- 哲学史を学びたい方へ
- 哲学史を学ぶ上でおすすめの5冊
- 哲学史の本をレポートで活用しよう
最新の哲学だけ学べばいいの?
科学を勉強しようとする方の多くは、まず最新の科学を勉強しようとするでしょう。
それは科学がどんどんと発展しており、過去の科学の知見はもう既に古いものとなっていることが多々あるからです。
では哲学も科学と同じように最新の哲学だけを学んでいればいいのでしょうか。
哲学の場合、決して最新のものだけを学んでいれば良いわけではありません。
もちろん、科学だって過去の知見から新たな着想を得たりすることはあるでしょう。
しかし、哲学の場合、2000年以上前の哲学が現代でも頻繁に引用され、そして遥か昔の哲学が現代においても実効性を持っているのです。
つまり、哲学とは過去の哲学を乗り越えて「新たな哲学」へと進歩するようなものではなく、2000年以上前の哲学がある意味で「最新の哲学」になりうるのです。
哲学史を学ぶ意義
ここに哲学史を学ぶ最大の意義が存在します。
つまり、過去の哲学を学ぶことはアクチュアルな問題に対して応用することができ、その意味で現代においても有効性を持つのです。
また過去の哲学を学ぶことは新たな哲学を考える上での出発点にもなります。
新たな哲学はなにも単なる思いつきによって生まれるわけではありません。
これまで脈々と考えられてきた思考の上に立ち、その思考から着想を得て新たな哲学は展開されるのです。
したがって、例えば今話題になっている「最新の哲学」を知ろうと思っているならば、その哲学の苗床になっている哲学を知る必要があるのです。
もし過去の哲学、つまりは哲学史を知らないならば、流行している「新たな哲学」の「新しさ」はおろか、議論さえも掴むことはできないのです。
以上から過去の哲学、つまり哲学史は古いからといって単純に切り捨てられるものではなく、現代の問題に対して視座を与えてくれるものであり、また新たな哲学を作る上でも、また理解する上でも重要なものなのです。
おすすめの哲学史の入門書5つ
では哲学史のおすすめの入門書をご紹介して行きたいと思います。
以下にご紹介する5つの哲学史の本はどれもおすすめです。
簡単な解説もしておきますので是非参考にしていただけたらと思います。
なお今回ご紹介する入門書の中には中級程度のものも含みますが、他の本で1冊哲学史を学んだ後に読んでいただければさらに哲学の魅力を理解いただけると思います。
こちらも是非チャレンジしていただけたら幸いです。
西洋哲学史(岩波新書)
大学院入試にも利用できるほどの内容でありながら、コンパクトに纏まっている哲学書といえば熊野純彦先生が書いた『西洋哲学史』になります。
過不足なく、それでいて解説がしっかりとしている哲学史の本は後にも先にもこの本だけです。
最新の研究が盛り込まれており、今や哲学を学ぶ人のスタンダードになっている本と言って過言ではないでしょう。
「古代から近代」と「近代から現代」の二分冊になっていますが、哲学史を新書の文字数でここまで描き出す力量に脱帽せざるをえません。
ですが、内容がコンパクトに纏まっている分、少し難易度は高めといった印象です。
したがって、読んでもわからない箇所は他の哲学史の本などで補う必要があります。
しかしながら、この本をしっかりと理解できたならば、哲学史で困ることは早々ないことでしょう。
新書のため、値段も安いため哲学を学びたいすべての初心者におすすめの本です。
概説 西洋哲学史
ここ最近、哲学史の語り口は多様に変化してきておりますが、従来の哲学史の語り方について知りたい場合はこちらの本がおすすめです。
従来の哲学の語り方はヘーゲルの哲学史講義に大きな影響を受けたものになっており、今現在はその哲学史の捉え方が見直されてきています。
しかしながら、出版から時間が経った本を読む場合、多くは従来語られていた哲学史に基づいて議論がなされていることが多々あります。
したがって、昔の本を読む際に従来の哲学史の語り方を知っておくと非常に読みやすくなるのです。
この『概説 西洋哲学史』は解説が非常に丁寧であり、他の本に比べて読みやすくなっています。
哲学史を古代から現代にかけて一通り学びたいと考えている人は是非手に取ってみてください。
哲学の歴史
『哲学の歴史』は著名な哲学者に焦点をあてて、その哲学者についての手厚い解説がなされている本です。
したがって、他の哲学史の本よりも詳しくひとりの哲学者に入門することができます。
また個々の哲学者の解説も一流と呼ばれる研究者が執筆しており、非常に信頼性も高いです。
哲学者の生涯からその哲学者の思想までしっかりと知ることができます。
加えてこの本のいいところは参考文献のリストが付いており、『哲学の歴史』を読んだあと次に何を読めばいいかが示されている点にあります。
出版されてから10年以上経っているため、最近の本は収録されていませんが、それでも勉強に非常に役立ちます。
オススメのものを上下に掲載しておりますので、興味のある分野を読んでみるといいでしょう。
西洋哲学史(講談社メチエ)
単線的な哲学史から脱却し、テーマ別に哲学史を再構成した本が講談社メチエから出版されている「西洋哲学史』です。
テーマ型になっていることから、初心者向けというよりは中級者向けの応用的な内容となっています。
したがって、一通り哲学史を学んだあとに読むことをおすすめします。
それでも内容は一流の研究者が書いているため素晴らしく、これまでの哲学史とは異なる内容に知的好奇心が刺激されること間違いなしです。
また精緻な議論がなされており、哲学研究というものの一端を垣間見ることができます。
研究書に手を出す前に小手調として読んでみるのも面白い読み方かもしれません。
世界哲学史
最近刊行された哲学史の本がこの『世界哲学史』です。
この本の特徴はなによりタイトルにあるように西洋に限らず、世界中の哲学を網羅的に収録していることです。
したがって、仏教をはじめとした様々な哲学が解説されているのです。
そのためか、通常の哲学史の本が各哲学者にスポットを当てて執筆されるのに対して、『世界哲学史』は「西洋中世における存在と本質」や「近代朝鮮思想と日本」のようにその時代の特徴ごとに論じられています。
ただ一通り読んでみたところ、書き手によって内容の良し悪しがあるといった印象です。
ですが、総じて質の高い解説がなされており、哲学を学び始めた人にも十分おすすめできる内容と言えます。
西洋だけでなく、アジアも含めた世界中の哲学を知りたいと思う人におすすめの本です。
哲学史をレポートで活かそう
さて多くの大学には哲学史の講義があることでしょう。
哲学史の講義ということはその学期末にはレポートだったり、教場試験などが課されることでしょう。
そのとき、授業だけでなく、哲学史の本を利用することで単位が取りやすくなります。
というのも、哲学は非常に内容が複雑であり、一度講義を聞いただけではなかなか理解できない場合があるからです。
したがって、哲学史の授業で単位をとるためには、内容理解を補助するために哲学史の本を一冊手元において勉強することが大事なのです。
また単位を取るだけでなく、評価を高くするためにも活用できます。
というのも、大学の講義内容以上の内容を盛り込んだり、別の視点で哲学史を捉え直したりすることでレポートの議論がより充実するため、高評価に繋がりやすいからです。
しかも講義以外に本を読んでまでレポート対策をする人はあまりいないため、参考文献を挙げるだけでも評価は高くなりやすいのです。
哲学史の知識は哲学だけでなく、いろいろなジャンルの本を読むときにも役立ちますので是非チャレンジしていただけたらと思います。
ここまでお読みくださりありがとうございました。