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【文系】卒業論文で使える一次・二次文献活用法。先行研究のまとめ方を徹底解説【卒論の書き方】

2022年5月25日

記事の内容

  • 集めた資料の活用方法について
  • 先行研究を「使える」ようにする意味
  • 最初に読むべき先行研究の見つけ方
  • 先行研究をまとめる7つのポイントと4つの注意点
  • 一次文献について

先行研究は「使える」ようにする

前回の記事()では卒業論文を執筆するにあたって「資料の集め方」について解説をしました。

今回の記事ではその集めた資料を実際の卒論で使えるようにするための方法をお伝えしようと思います。

では「使える」というのはどう言うことでしょうか?

まず資料を集めた段階ではどの論文あるいは研究書が自分の卒業論文に役立つかは分かりません。

現段階では膨大な研究の山の中から自分の研究と近いものをただ集めただけなのです。

ところで卒業論文には字数制限があります(次の記事で詳しく解説予定)。

一般的に言って卒業論文の字数は脚注も含めて2万字から4万字前後が普通ですから、ただ集めただけでは簡単に字数をオーバーしてしまいます。

したがって、ここからさらに自分の卒業論文に利用できそうな論文を絞っていく必要があるのです。

そして、自分の卒業論文に利用できる論文を絞るだけでなく、それを卒業論文に活用しやすいようにまとめることも重要になってきます。

なぜなら、参考文献を引用する際も自身の卒論の論旨にうまく合致した部分を取り出す必要があったり、対立する解釈を提示する際にうまく二つの論文を扱う必要があったりするからです。

以上から集めた資料を「使える」ようにするとは 1/卒業論文の字数制限に収まるように、また 2/自分の論文に引用しやすいように参考文献を予めまとめておくことなのです。

POINT

集めた資料を「使える」ようにするとは 1/卒業論文の字数制限に収まるように、また 2/自分の論文に引用しやすいように参考文献を予めまとめておくこと

参考文献はどれから手をつけるべきか

では早速集めた資料を使いやすいようにまとめていくわけですが、しかし、どこから手をつけていくべきなのでしょうか。

結論から先に言えば、自分の卒業論文のテーマと一番関係のありそうなものから手をつけていくのです。

なぜなら自分のテーマに近い文献こそ、それを批判するにせよ、その論旨を伸ばしていくにせよ、先行研究として扱うことが多くなるからです。

また自分の卒論テーマと関係の深い論文だったり、研究書だったりを引用していることが多く、次に読むべき論文の指針を与えてくれる場合があるからです。

したがって、まず読むべきは自分の卒業論文のテーマと最も関わりのありそうな論文ないし卒業論文ということができるでしょう。

ではそうした自分の卒論と関係が深そうな文献はどのように見つけるべきなのでしょうか。

以前の記事()に詳しく書いたのでそちらを参考にしていただきたいのですが、まずは目次を見て自分と同じテーマにその論文ないし研究書が多くのページを割いて議論しているかどうか見てみましょう

同じテーマに関する議論がたくさん載っているのであれば、それだけ自分の卒業論文に役立つ情報が記載されている可能性が高くなります。

他にも自分の集めた資料の参考文献をざっと見て「どの論文にもどの研究書にも引用されている文献」を探してみるのもいいでしょう。

多くの先行研究で参照されている文献はその研究料やのスタンダードとされており、そのテーマを扱うなら必読の文献と言えるからです。

またもし先生や先輩などに聞くことができるのであれば、自分のテーマを伝えてその分野の研究で必ず参照されている二次文献を聞いてみるのもおすすめです。

POINT

まず手に取るべきは自分の論文テーマに最も近い二次文献。

探し方は目次をみて自分と同じテーマについて多く議論しているものを選ぼう。

他にも多くの論文や研究書に引用されている文献を探してみたり、先輩や先生に聞いてみるのもおすすめ。

まずは文献を読んでみよう

ようやく参考文献として読むべき1冊目の本が決まりました。

しかし、まだこの時点では目次だけで判断したのであり、本当に卒業論文で使うことができるかどうか不安に思う人もいるでしょう。

ですが、何事も実際にやってみなければ分かりません。

自分のテーマに近い論文・研究書を読んでみることで、その研究において自身のテーマがどのように議論されているのかを知ることができ、その記述が多ければ多いほどさまざまな議論をより詳しく知ることができるのです。

これにより例えば、自分が考えている問題が実はすでに解決されていてそれより一歩進んだテーマが議論がされていたり、その論文の著者とは異なる主張をしている研究者の主張の方が面白いと感じ、次に読むべき研究書・論文が見つかったりなど、自分の研究がどんどんと広がっていきます。

もちろん、自分が考えていたことがズバリ議論されていないこともあるでしょう。

しかし、それでもその論文ないし研究書の注釈で簡潔に触れられていたり、本文の中にちょっとした記述があったりすることが多々あります。

その場合はそうした箇所を端緒にすることで自分の関心に近い参考文献を見つけ出す手がかりにすることができるのです。

しかしながら、ごく稀にですが目次では近いと思ったものが実は全然自分のテーマと絡んでこない場合もあります

それは自分のテーマがメジャーなものでなく、マイナーな時によくあります。

その場合はその本を読むのをやめ、すぐに別の文献に切り替えるのも方法の一つです。

まずは研究書を一冊読んでみましょう。

一冊読んでみると色々なことがわかり、自ずと自分の研究に必要な文献や内容に関して取捨選択ができるようになります。

POINT

まず一冊自分の研究テーマに近い文献を読んでみることで、自分のテーマでどのような議論がなされているかを知ることができる。

読んでみることで自分にとって必要な内容や文献を取捨選択できるようになる。

文献をまとめる7つのポイント

当たり前のことですが、二次文献は自分で読解して内容を解釈する必要があります

そしてその解釈したものを卒論において自身の論点と合わせて議論していくのです。

多くの方はレポートなどでそうした訓練を積んできたことと思います。

ですが、卒業論文となりますとレポートとは比べものにならないほど字数を書かなければならないのです。

したがって、以下に文献のまとめ方を解説していきたいと思います。

ぜひ参考にしてみてください。

内容はノートやパソコンにまとめよう

ただ漫然と参考文献を読んでしまってはいざ卒論を書こうと思った際に、内容を忘れてしまい読み返すなど二度手間がかかってしまいます。

したがって、読んだ内容はノートやパソコンなどにメモしておくことが重要です。

おすすめはパソコンで Word などに保存していく方法です。

というのも、パソコンに保存しておけばそのまま簡単に卒業論文に利用することができるからです。

文献自体に付箋やしるしをつけよう

もし読んでいる文献が自分で購入したものであれば、その本自体に付箋や印を付けるといいでしょう。

自分の卒業論文で使えそうな文章に出会ったら、そのページに付箋を貼り、その付箋に簡単なタイトルを付けるのです。

また本を汚すのに躊躇いがないのであれば、重要な文章に黄色マーカーなどで印を付けるのもおすすめです。

もちろん、購入せず図書館などで借りた本には付箋や印は付けることはできません。

しかし、大学のコピー機などで自分の卒論にとって重要な部分をコピーしておくと後々卒論を執筆する際に便利になります。

重要な文章に出会ったらそのまま抜き書きしよう

先にパソコンかノートに内容をメモしようというお話をしましたが、そのメモの内容として文章をそのまま抜き書きする方法があります。

卒業論文だけでなく、多くの論文は自分の議論の補強をするために引用を行います。

したがって、自分の卒論で使えそうな重要な文章があれば、そのまま書き起こしてメモするようにしましょう。

その際、その文章が載っているページ数や本のタイトルなども一緒にメモしておくと実際に引用するときに楽になります。

無論、正しい引用の仕方を行わずにあたかも自分の意見のようにその文章を卒業論文に書いてしまうとと盗作になります。

抜き書きした文章をそのまま本文に使うのは絶対に避けてください。

重要な議論はその議論自体をまとめよう

抜き書きするには長かったり、一節ないし一章まるまる自分の研究に役立ちそうだった場合、そこで展開されている議論を自分なりにまとめてみましょう。

やり方としては一度その章ないし節を熟読し、その論理を追ってまとめていきます

大事なのは著者のその節あるいは章の中での問題提起と結論であり、まずはこの2点を抑えた上で具体的な議論へと目を向けていきましょう。

そしてその主張の根拠だったり、その主張に対する反論だったりに注意して議論の骨子をまとめていくのです。

もちろん論旨をまとめていく上で、重要な一文だと思うなら抜き書きしておくことも大事です。

議論を上手にまとめることができれば、自分のテーマと照らし合わせて論点を作ることが容易になります。

段落ごとに要約を作ってみる

まとめ方のコツとしてはまず段落を読んだら段落ごとの要約を簡単に作ってみましょう。

基本的には1段落での主張は1つです。

その主張が何かを考えて、パソコンや本の端などにメモをとっていきます。

おすすめの方法としては段落に自分なりのタイトルをつけてみるといいでしょう。

このタイトルがその章での著者の主張を包括したものにできたらしっかりと読解できていると考えて良いのです。

全体の要約を作ってみる

段落ごとの要約が済んだら次に章全体あるいは節全体の要約をしてみましょう。

コツとしては問題提起と結論をしっかりと掴み、その上で著者の主張を中心にまとめていきます

具体例は基本的に捨象するようにし、主張の骨子だけを取り出すように努めましょう。

これによって、その章や節で著者が主張したい内容を明確に掴むことができ、卒業論文を執筆する際にも役立ちます。

またその研究書ないし論文の次の節や章を読む時にも役立つため、たとえメモしなくても抽象的な文章を読むときは考えてみるといいでしょう。

自分の卒論との繋がりを見つける

最後に、メモを取ったら自分の卒論との繋がりを考えてみましょう。

卒論を執筆する際、メモを取った全てを使うことができるわけではありません。

しかしながら、自分の主張を補強できそうな議論だったり、自分の主張と対比することができそうな議論だったりに目星をつけることができます。

したがって、そうした議論があるならば自分が取ったメモに「自分のコメント」をつけておきましょう

基本的に卒業論文というのは自分の主張を展開するものです。

そのため、自分のコメントにはその主張に賛成なのかどうか、あるいは示されている議論がしっかりと根拠のある主張と言えるかどうか、自分なりの言葉で書き記しておきましょう。

もちろん、後になってそのコメントが使えないと判断しても良いのですが、現段階でどのように卒論で使おうと思っているかを書き記しておくと、後で執筆する際の道標になったり、ヒントになったりして便利です。

文献をまとめる際の注意点

ここまで文献を活用するためのまとめポイントをお伝えしてきました。

しかしながら、この文献のまとめ方にも注意すべき点があります。

したがって、ここからは文献をまとめる際の注意点を4つご紹介したいと思います。

文献をまとめる時は是非以下のことを守りながら行うようにしてください。

引用を除いて自分の言葉でまとめよう

卒業論文において自分以外が書いた文章を、自分が書いたように提示するのは盗作・盗用となります。

もし盗作・盗用が発覚した場合、卒業論文として認められないどころか、最悪の場合、卒業自体が認められなかったり、そのまま退学になってしまう可能性さえあります。

したがって、他者が書いた文章を扱う際には必ず正しい方法で引用する必要があります

そのためには、先行研究をまとめるこの段階でも引用する文章以外は自分の言葉でまとめておくことがおすすめです。

誤って他者の文章をそのまま用いないためにも最新の注意を払うようにしましょう。

メモをするときは書誌情報も一緒に

メモを取る時は一緒に書誌情報も書いておくと後々卒論を執筆する際に非常に便利です。

というのも卒論で引用する際や参考文献一覧に掲載する際にいちいち調べ直す必要がないからです。

また同じ本を後になって読み返すときもすぎに該当箇所に辿り着くことができます。

メモすべきは1/執筆者名、2/本のタイトル、3/出版社名、4/出版年、5/引用ページです。

雑誌の場合は所収されている雑誌名とその論文のタイトルなどもメモするようにしましょう。

借りた本には何も書き込まない

当然のことですが、借りた本には絶対に書き込まないようにしましょう。

図書館などから借りたにも関わらず書き込みをして問題になった場合、同じ本を購入して返却しなければならない場合があります。

その本が売っている場合、最悪新品のものを買えばいいのですが、問題はすでに絶版になってしまっている場合です。

流通が少ない本の場合は、マイナーな本でも中古品が非常に高価なことがあり、下手をすれば数十万以上のお金を請求される可能性があります。

どうしても書き込みをしたい場合は必ずコピーなどを取ってから行うようにしましょう。

後で見返した時にわかるように

メモを取る上で重要なのは後で見返した時にそのメモを見て内容がわかるかどうかです。

その本を読んでいるときは内容がわかっても、時間が経ってしまうと前後の文脈がわからない場合が往々にしてあります。

必ず後で読み返してもわかるようにまとめ、自分のコメントを付すようにしましょう。

またノートなどに手書きのメモを取る場合は「読める字」で書くようにしましょう。

自分さえ読めればいいのですが、自分でも読めない字だとせっかく取ったメモの意味がなくなってしまいます。

一次文献もやり方は同じ

ここまで二次文献の活用方法についてお伝えしてきました。

最後に一次文献についてもコメントしておきたいと思います。

一次文献も基本的には二次文献と同じです。

一次文献を読んで自分なりに要約し、その要約に対して自分なりの解釈をコメントとしてメモするのです。

そのコメントにはどうして自分の解釈がそうなるのかをしっかりと考えて根拠づけしておきましょう。

この解釈をもとに二次文献や先行研究と付き合わせて卒業論文にしていきます。

二次文献の資料操作も重要ですが、それ以上に基本となるのは一次文献です。

自分の主張の整合性が取れているかどうかも確認しつつ、しっかりとまとめるようにしましょう。

なお多くの著作や資料を扱う場合は、その著作・資料ごとにまとめるか、あるいはテーマごとにまとめてみましょう。

後者の場合は出典の明記を忘れずにまとめてください。

POINT

基本的には一次文献も二次文献と同じようにまとめる。

一次文献を読んで自分なりに要約し、その要約に対して自分なりの解釈をコメントとしてメモする

急がば回れ

ここまで一次文献・二次文献の活用方法について解説してきました。

一次文献・二次文献は文系の卒業論文を執筆する上で、無くてはそもそも始まらないものです。

ですが、その卒業論文というものは非常に文章量が多く、書くには周到な準備が必要なものと言えます。

もちろん、こうした準備もなく卒業論文をなんなく完成させてしまう人はいるでしょう。

しかし、多くの人は情報がとっ散らかってしまいがちで、議論を上手に構成することができないことがほとんどです。

しかも卒論は一年という長期スパンで執筆するものであり、4月に読んだ本は12月になると忘れてしまっています。

ですから、一見すると文献をまとめるという作業は労力のかかるものであるため、遠回りをしているように見えるかもしれませんが、実際は議論をしっかりとまとめておくことで後で読み返した時にすぐに議論を追うことができ、卒論の執筆を早めてくれるのです

卒論を上手に、しかも早く書きたいのであれば「急がば回れ」なのです。

是非集めた資料をそのままにしておくのではなく、自分なりの言葉でまとめてみるようにしましょう。

次回は卒業論文の基本についてお話ししようと思います。

ここまでお読みくださりありがとうございました。

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