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【失恋した時に聴いてほしい曲】New Radicals/Someday We’ll Know

2020年2月6日

New Radicals

失恋の話が定期的に出てくるのは、とはいえ私がまだ少しそれを引きずっているからなのです……。

さて、パートナーが部屋から去って、とても辛かった時期にある種の救いとなったのがニュー・ラディカルズの「Someday We’ll Know」でした。

ニュー・ラディカルズは1997年にアルバム『Maybe You’ve Been Brainwashed Too』を引っさげてデビューしたバンドです(バンドとは言っても、実質的には作詞作曲のほぼ全てを担うグレッグ・アレキサンダーのソロプロジェクトであったというのが本当のところですが)。

「多分お前も洗脳されたんだ」という不穏なタイトルを冠したこの1stは、しかし世界の音楽フリークから絶賛を受けることとなります(なお、アルバムにはこの名前を冠したトラックが収録されています)。

ですが、バンドはその後たちまち解散してしまい、名盤一枚のみが遺った格好となります。

上記のエピソードだけを見るとなんとも神秘的なイメージを覚えてしまいますが、アルバムに針を落とすと鳴り響くのは底抜けに明るいディストーションギターだったり(「You Get What You give」、アルバムの一曲目を飾る彼らの代表曲です)、甘いコーラスが胸を打つミッドテンポのバラードだったり(「In Need of a Miracle」)、ノイジーなギターの不気味な響きをバックに歌われるポップなロック(「Maybe You’ve Been Brainwashed Too」、タイトルトラックです) だったりと、その音像はとてもカラフルでキャッチーです。

全ての楽曲が聞き流すことのできない印象的なメロディを備えており、アレンジのセンスも抜群で、なるほど間違いなく名盤だと太鼓判を押すことができますし、多種多様なコンセプトを親しみやすい一つのポップソングに仕立て上げてしまうフロントマンのグレッグ・アレキサンダーの才能には惚れ惚れとします。

掛け値無しに胸を張ってレコメンドできる一枚です。

そんな宝石のような楽曲の中で、わけても私にとってかけがえのない一曲が、冒頭でも述べた「Someday We’ll Know」です。

「You Get What You give」と並ぶ彼らの代表曲で、ダリル・ホール&ジョン・オーツがカヴァーしたり、マンディ・ムーアとショーン・ウェスト主演『ウォーク・トゥ・リメンバー』の挿入歌として主演二人が歌ったりと、様々なアーティストによって愛され、様々な作品で取り上げられ続けている曲でもあります。

メロウなピアノとアコースティック・ギターの調べから幕をあけるこの曲は、数年前に別れたであろうパートナーとの思い出を反芻しながら車を走らせる男性が歌詞を引っ張っていきます。

私には、彼(しかし、彼女と呼ぶことも間違いなくできる曲です)が漏らすぼんやりとした、しかし切実な言葉がとても強く刺さります。

Someday We’ll Know

歌詞に登場するアメリア・イアハート、そしてサムソンとデリラ。

前者は誰にも知られず行方不明となった世界初の女性飛行士、後者は旧約聖書に登場する男女。

孤独の中に消え、その遺体や飛行機のかけらすらも知られないイアハートと、裏切られてもデリラを愛したサムソン。

私は(もちろん)死んでもいないし、パートナーは私を裏切ったのでは決してありません。

だから、ただ一人で最期を迎える途方もない寂しさも、裏切られてもその人を想い続けるほどの壮絶な愛も知る由もありません。

いや、たとえ同じような経験をしたとしても、私は彼ら彼女らの寂しさも愛も理解できないのだと思います。

そしてそれは「どうして私が君にふさわしくなかったのか」という問いも同じなのでしょう。

おそらく理由は無数にあるし、あるいは絶対にたどり着くことのできないものだからです。

「きっと知る」だろうと曖昧な期待を抱いてしまう私が、しかし本当に救われるのは、私を悩ませていた問いすら忘れ、紋切り型の言葉でかつての問いを安易に捨てされるようになったときなのかなと、今は思います。

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